解説「投げの形」手技・腰技・足技

初段昇段に必須の「投げの形」手技・腰技・足技について、当協会の野中先生に解説していただきました。
技を言葉で理解することも大切ですので、是非参考にしてください。

野中伸一先生

柔道「投げの形」ポイント解説

2022/4/20 牛久市柔道協会 野中伸一

【概説】

手技、腰技、足技の三種類で構成されているが、全てにおいて「いち、に、さん」とテンポ良く動作を取る事が肝要である。
特に「受」の動きが先行する点が重要で、「取」の動きに合わせると全体的にギコチない動作となってしまう。
「取」は投げようという意識が強いと姿勢(形)が崩れてしまうので、あくまで「投げの形を取る」という点に留意すること。

【手技】

浮落し

(取)

足の運びは、「いち、に」までは通常の一歩の幅で、「さん」は一歩半の歩幅で動く。投げの動作の時の引き手は、自分の腰の真横に真っ直ぐに引落す。投げ終わったら姿勢を真っ直ぐにして正面を見る。離した釣り手は太腿の上に置く。投げようとして、引き手を湾曲した方向、或いは、自分の腰よりも後ろの方向まで引いたりしない事。これらをやると、姿勢(形)が崩れてしまう。

(受)

「いち、に、さん」まで通常の一歩幅で動く。投げられる時は思い切って前方回転受け身を取る。

一本背負い投げ

(取)

「取」と「受」の間は1間(けん)(畳の長い方の幅)を取る。「受」が打ち込んできたら、一旦「受」の肘の辺りを手刀で受止め、すぐに握りに変えて体を大きく回転して一本背負い投げを掛ける。投げ終わる時は両手で「受」の腕を引き、姿勢を真っ直ぐに保って正面を見る。

(受)

足を一歩踏み出し、踏み出した足と同じ側の手を前に大きく出す。打ち下ろす方の腕は大きく振り上げ、拳を握って「取」の頭上に振り下ろす。一連の動作の間は姿勢を真っ直ぐに保つこと。

肩車

(取)

足の運びは、「いち、に」までは通常の一歩の幅で「さん」は一歩半の幅で動く。「さん」の時は足を引くと同時に体勢を大きく沈めて、引き手の高さを保ちながら自分の首を「受」の太腿に密着しつつ、投げる方向の足を反対の軸足の方に引きながら「受」を肩に担いで立上り、正面を見据えて姿勢を保って静止した後に、肩越しに「受」を投げ落とす。

(受)

歩幅は全て一歩幅で動く。「取」の肩に担がれた時は、顔と体を真っ直ぐに保ち、「取」の背中に回した手は「取り」の帯の上部に指を揃えて置く。

【腰技】

浮腰

(取)

「受」が打ち込んできたら、打ち込んできた腕の下に体を移動し、自分の体を「受」の体に密着し、「受」の背中に腕を回して、手を「受」の帯の辺りに添えて体を抱え込むようにする。この動作と並行して「受」の差し出された腕を掴み引き寄せつつ、引き手側の足を軸足の方に回転しながら、この時の腰の回転を利用して投げる。

(受)

一本背負い投げと同じ動作を取る。

払い腰

(取)

「いち」で「受」の体を引き寄せ、「に」で釣り手を「受」の背中に回し手を肩甲骨に当てる。「さん」で引き手を引きつつ、引き手側の足を大きく反転させ、逆側の足を前方に大きく振り上げて払いながら投げる。

(受)

「いち、に、さん」まで通常の一歩幅で動く。投げられる時は、大きく宙に浮いて投げられる。

釣込み腰

(取)

足の運びは、「いち、に」までは通常の一歩幅。釣り手で「受」の奥襟を掴む。「さん」で体を大きく反転させて、釣り手を釣り上げたまま体勢を低くする。「受」が投げられるのを防ぐために後方に体を反らすが、戻ってきたところを腰に乗せて投げる。

(受)

足の運びは全て通常の一歩幅。「さん」で投げられる時に、一旦、後方に体を反らした後に「取」の方に体を戻して、大きな動作で投げられる形を取る。

【足技】

送り足払い

(取)

自然体で組んで、釣り手側の方向に通常の一歩幅で移動しつつ、「さん」で足で払って投げる。歩幅は大きく取らないこと。 引き手は外側(進行とは反対側)に戻すことなく、「いち」、「に」、「さん」と徐々に進行側に押し進める(「受」の体勢を崩す)。払う時の足は、真っ直ぐに伸ばした状態で払うこと。

(受)

足の運びは全て通常の一歩幅。「さん」で足払いを掛けられた時は、大きく横に飛んだ形で投げられる。

支え釣込み足

(取)

「いち」で「受」を引き出し、「に」で軸足(左足)を止め、右足を右側に大きく踏み出し、「受」の右足のくるぶしに軸足(左足)を当て支えて、体の反転の動きで「受」を投げる。支える足は、真っ直ぐに伸ばすこと。投げ終わったら両手で「受」の腕を軽く引いて、投げた方向を真っ直ぐに見据える。

(受)

足の運びは全て通常の一歩幅。「さん」で投げられる時は、大きく前方に飛んで受け身を取る。

内股

(取)

自然体に組み、釣り手を引きつつ軸足(左足)を中心にして回転し、「さん」で足を真っ直ぐに「受」の股に差し入れて、跳ね上げて投げる。体を回転する時の歩幅は、全て通常の一歩幅。軸足(左足)の動きは最小限に留める事。そうでなければ、いつまでも回転を続ける事になり、投げる事が出来なくなる。

(受)

「取」の釣り手側の体側に自分の体を寄せながら、「いち」「に」は通常の一歩幅で動くが「さん」は一歩半の幅で動く。(「取」が投げ易いように)「取」の足が股に入ってきたら、自分の方から投げられる形を取る。